K's Atelier

個人的な学習記録

下剋上算数

 

いや難しいって。特に各回最後の図形問題。

第20回の10問目

各辺の比率に気づくまで,だいぶ時間を使ってしまった。時間内に解け,というならば,確かに攻略法を教わっていないと大人でも解けないだろう。こんな問題ばっかり大量にだされて,「たくさん,速く,正確に」解く訓練をしていたら,数学が嫌いになるのも当然だ。解法を発見して楽しんでいる時間を与えないのだから。

数学の経験の中には「かなりの長期間(数年間とか),同一問題が分からないまま過ごす」「ある時突然『えっ,こういうことか?』と気づく」という経験がある。この経験が無視されると,数学を通して「考え続ける力」はつかない。

この手の問題は,大人が時々「脳トレ」としてやるくらいでちょうどいい,という気がする。

理論の背景

大学数学の文献案内 - 数論幾何の理解を目指して - - パンの木を植えて

しかしながら,きわめて残念なことに,この「動機となる問題」の部分を一切説明しない数学書が世の中にはたくさんあります.

完全に同意。どうも世の中の数学書は動機を書いてはいけないというルールでもあるのか,最初からごりごりに最適化した理論しか説明しないものが多い。

それって,プログラミングで言えば,この時代にアルゴリズムの基礎を解説するのと同じ。今どきソートアルゴリズムの本ですら,いろんな背景が書いてあるのではないか。と思ったが,最近はアルゴリズムの本を読んでいなかった・・・

とはいえ,最近はずいぶんと導入部分によりそった数学書籍も出てくるようになったとは思う。先生方もいろいろと考えてらっしゃる様子。

準素イデアル

Prime ideal と Primary

可換代数入門と参考資料を相互確認中。Prime idealは「素イデアル」,Primaryは「準素」。訳語として1対1対応しているから良いのだが,翻訳の難しさを感じる。

11章の演習問題1は,以下2点で「代数幾何学入門」の記述と対応していることが分かった。

1.第1講の陰関数定理の説明

2.定理13.3.4の「Vがpで非特異であることは,Aのm-真完備化A^が~」の"A^"が,証明において「これは,A^が正則局所環であることにほかならない」の記述

 

こんな感じで分かる箇所があると楽しい。

可換代数入門

翻訳本に原著の英語を書き込む

可換代数の用語を使う場面は英語しかないので,翻訳書に英語の用語を書き込んでいる。Atiyah-MacDonaldの原著はAmazonでは高くて手が出せなかった。

翻訳本も丁寧に翻訳されているので間違いはないと思う。ただ,日本語自体の問題から,「allもeveryも"すべて"になってしまう」「意味を伝えるため,原文には無い"すべて"が補足されている」など,翻訳の限界も感じる。単数・複数,"すべて"と"それぞれ"がかかってくる範囲など,気を付けて読みたい箇所はある。

日本語の良い訓練になる。

数学系動画

線形代数

あらゆる数学分野で問題を解決する道具になるので,ときどき眺めるのが良い。

Introduction to Linear Algebra | Wild Linear Algebra A 1 | NJ Wildberger - YouTube

代数的トポロジー

やりたいことが明確なので,可換代数の前に眺めておくと良い気がする。

Introduction to Algebraic Topology | Algebraic Topology 0 | NJ Wildberger - YouTube

可換代数

教科書的

何か1冊手元に教科書を置いて,用語をだいたい頭に入れたうえで聞くと見通しがよいと思う。

1.1 Preliminaries (Commutative Algebra and Algebraic Geometry) - YouTube

(雑談編)なぜイデアルを考えるのか? - YouTube

演習問題解説

アティマクはみんなが解説してくれるので,眺めているだけで楽しい。あんまりこればかり見ていると,演習問題を番号ごと覚えてしまうかもしれない。

【1から始める可換環論withアティマク】part1 可換環の定義とアティマク演習問題1章の第1問 - YouTube

【今週の可換環論】SpecZ[x] - YouTube

圏論

関数型プログラミングが一度ブームになってから10年以上たち,解説が普通に入手できるようになった。プログラマHaskellをちょこっとやってからCategory Theory for Programmersの著者の解説を聞けば十分かと思う。

Category Theory 1.1: Motivation and Philosophy - YouTube

Category Theory For Beginners: Introduction - YouTube

Category theory foundations 1.0 — Steve Awodey - YouTube

Awodey先生の書籍"Category Theory"を久しぶりに眺めた。がやたらとプログラミング系の話題が目についた。プログラマでない,数学系の人が読むなら,群論などの代数学の基礎的な計算ルールさえわかれば読めると思う。昔読んだときは,なんで矢印だけでいろんな話が進むのか全く分からなかったが,群の準同型から何が言えるのか,が分かっていなかったからだといういうことがよく分かった。

代数幾何学への道

学習体系ばかり考えても「計算できるようにならないと楽しくない」という話はあるのだが,一つの道筋をまとめておく。プロの数学者ではないので,それぞれの世界の見どころを知り,ちょっと穴場を探索できれば良い。

ただ,学生ではないだけに,演習書をかたっぱしから攻略するわけにもいかない。自分にとって現在のベストな文献をまとめる。

線形代数

線形代数代数学の具体例なので必須。なのだが,線形代数はあらゆる数学の基礎になっているので,目的を絞って学習しないときりがない。一般人はキャンパス・ゼミの演習ができれば十分,このあとも遊べる。

群・環・体

ここをみっちりやりたければ,代数学1 群論入門 (代数学シリーズ)もあるが,「演習群・環・体入門」だけで多項式環までカバーしているので,イメージを掴むには十分だと思う。本書は行間が少なく,代数学はどういう思考をするのかが分かりやすい。詰将棋的な本で,気分転換したいときの良いパズルになっている。

代数的トポロジー

イメージ重視で,計算も追える。量的にもちょうどいい一冊だと思う。

https://pi.math.cornell.edu/~hatcher/AT/AT.pdf

などがあるのは知っているが,専門的になると素人は時間的に厳しい。ここでホモロジー群を考える動機を把握しておくのが大事。

可換代数

演習書。本書だけではとても独学はできない。のだが,さすがは歴史的な書籍だけあって,Webで検索すれば,文書でも動画でもたくさんの解説が見つかる。結果的には他の本を読むよりも効率がよく,楽しめる。

 

・・・といったことを,永井保成「代数幾何学入門」と並行して眺めていけば,大きな苦労なく代数幾何学の入り口にたどり着ける気がする。「代数幾何学入門」を外観するだけなら,線形代数代数学入門書をきちんと読んでいれば十分だと思う。私はむしろ,「代数幾何学入門」を読んで「群・環・体入門」で語っていることの面白さを知ったので,偉そうなことは言えない。

 

 

どうも日本人の気風なのか,数学書にしても楽譜集にしても日本人の著者,訳者の本は「完璧にものにしなければならない」という記述をよく見かける。周囲も完璧主義を鵜呑みにし,賞賛している気がする。まぁプロならそうなのかもしれないが,こういった発言は脱落したと感じる者を生み,作者が広げたいと思っている世界を自ら狭めることになる。完璧を求めるよりも,楽しさを伝えてほしいところ。

今回紹介した書籍,解説動画はいずれも,楽しさや広がりを伝えることを重視している気がする。

Awodey,"Category Theory"

Steve Awodeyの"Category Theory"という本がある。PDFで公開されている。

https://www.andrew.cmu.edu/course/80-413-713/notes/

製本された書籍もある。Amazonで検索したら,自分は2010年に購入していた。私が関数型言語に興味を持って,読んではみたが全く訳が分からなかった本だ。当時の自分はScalaに興味があった。当時のScalaにとっては,そこまで圏論的な思考は求められていなかったので,有用性が感じられなかったのだ。通常は,Haskellから圏論に興味を持つのだろう。

最近,代数幾何学を眺めていて,入門であっても少しは圏論の話が出てくる印象を持った。もちろんDerived categoryがどうした,などという話は入門では出てこないので,そんなに体系的に調べるつもりもなかったのだが,先日こんなサイトを見つけた。

www.orecoli.com

Awodey本で自習する際の参考資料としてすばらしい情報源だと思う。

14年前の自分と,今の自分を比較するにはよい材料な気がしている。こういう,「長い時間を空けて,改めて今の自分を確認できる機会」はなかなかない。

 

圏論勉強会 @ ワークスアプリケーションズ

これも参考になる。