マセマの「演習微分積分」は全部計算問題。とはいってもε,δ論法の記述もさせるし,後半は3重積分とか出てきて,丁寧に計算を追っているので好感度高い。
一方で,「数学科の数学はそういうもんじゃない」とも言われるようだ。自分は工学系なので計算ができるだけで嬉しいのだが,ちょっと数学科の雰囲気も味わえるかな,と思って解析演習を手に取ってみた。
例題1.1。「有界単調増加列は収束する」という事実から,1/nの極限が0になることを確認するという問題。
マセマでεδの計算記述を見てきた私は,何をすればいいのかでいきなり躓いた。
結局これは,自体を計算したいのではなく,「nが無限大に持っていけるということから,Nは有界ではないと言える。結果として極限が0になる」という話をしたい,ということに気づくのにまず時間がかかる。
あと,「とくにとしてみると・・・であるから矛盾」というのも,「何の主張に対して矛盾なのか」が分かりにくい。
を極限値と仮定したのに,という式が出てきたことに対し,「""という値は,に含まれる。極限値より大きい値がの中にあるってことを表すわけだから,"は極限値"という主張とが矛盾する」ということだ。
こういう文章は,「何と何がどういう理由で矛盾するのか」を言い直すべきだと思ってしまう。他の数学書の背理法の説明も,たいていは対象が判別しにくい書き方をしているので,昔の文章からの伝統なのかもしれない。最近出てきた「分かりやすい」と言われる数学書は,「●●を示せばよい。」から始まっていたりする。証明の記述も徐々に改善されてきていると思う。
こういうことが数学科の数学の要素なのだろう。そりゃ高校数学とはわけが違うし,計算得意な人が挫折するという話も分かる。
なんて,文句みたいな書き方をしてしまったが,「解析演習」はこれはこれで楽しい。良い説明を考えながら読んでいけば,一生遊べる。