Weierstrassの割り算定理を証明せよ,という演習問題。こういうことかな,というスケッチを示す。
問題文の記述から,Weierstrassの準備定理を適用すると,gはyについてm次のWeierstrass多項式である。
これをヒントに,gを以下のようにまとめられればよい。
余りを移項する。gから余りを差し引けば,きれいに割れる。問題文から,この移項をした式もWeierstrass多項式である。このgの整理が本演習の肝のようだ。
ところでp.38にgの重み付き斉次分解の式がある。
このgの斉次部分を展開していくと,
という形でどんどん続いていく。本文中にも書かれているが,左辺の次数はm-1以下である。なので,右辺の項のうち,m+1以上の項を集めたものが全体としての余りになるのではないか。
感想
上記の文中「m+1以上の項の次数はm-1以下」という分かりにくい記述になっているが,これはmを中心として項を整理した都合のようだ。代数学の分野では,「うまいこと並べ方を整理してまとめる」というテクニックがそこら中にあるようで,著者の意図が分からないと「なんでこんな添え字付けなんだ?」となる。
Weierstrassの割り算定理は,スキーム論を扱う本(Bosch"Algebraic Geometry and Commutative Algebra"など)では出てこない。著者が第4章でこの定理を入れてきたのは,一つは「高校数学との連続性」を見せたかったのではないかな,と思う。具体的な多項式の割り算は,高校数学の範疇だからだ。もう一つは,本書の前半が代数幾何学の歴史的な側面を持っているからだろう。
どういうわけか,Weierstrassの割り算定理は英語文献しか出てこない。本書のような帰納的な証明の記述が見つからない。 6.2: Weierstrass Preparation and Division Theorems - Mathematics LibreTexts
Wikipadiaで見てみたらドイツ語文献に行き当たる。そろそろどろ沼化してきた。 ワイエルシュトラスの予備定理 - Wikipedia