駐車場附置義務の問題
都内のマンションには,「駐車場附置義務」がある。
この義務の背景としては,都内在住者が自動車を所有する際,駐車場が不足するという懸念があったからと思われる。しかし,現状はこの駐車場附置義務が,多くの管理組合にとって大問題になっている。
箇条書きにするとこんな問題がある。
- 機械式駐車場の空きが多いと,維持費ばかりかかって,赤字になる。
- 古い機械式駐車場は,最近流行の車高の高い車両が入らない。
- 屋内・地下駐車場の場合,駐車場貸出や店舗への転用が難しい。
- そんなこんなで放置していると危ないので,行政からの点検も厳しくなる。
条例改正の現実
こういう状況に対して,東京都も附置義務に対する緩和条件を出してはいる。
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/parking/file/gijutsu_jogen.pdf
ただし,「東京都内のマンション管理組合」という条件で実施事例を考えると,ほぼ皆無なのではないかと思われる。私が東京都の都市計画部建築指導課に問い合わせたところ,2022年1月時点で,
技術的助言に基づいて東京都駐車場条例第 19 条の 2 第 1 項第 2 号の認定した物件はございません。
とのことだった(原文ママ)。区によって多少の違いはあるかもしれないが,あまり期待できない。
改善が進まない理由
問題意識はあっても行動が伴わない理由は大きく2つあると思う。
1. 管理組合が素人集団であること
マンションの管理組合は「誰かがやってるだろう」という程度の認識で運営されているのが現実ではないか。管理組合が目的をもって課題を解決しているとはいいがたい。現状の「素人まかせ」で,行政と一体化した管理ができるのか,個人的には非常に懐疑的だ。「附置義務緩和」で実際に検索したことのある区分所有者が何人いるのか。
機械式駐車場の撤去などは,「事前の調査」「専門家の活用」「行政との連携」が欠かせない。調査や提案にはお金がかかるのだ。管理会社がボランティアでやってくれるわけがないのだが,管理組合がそのあたりを理解しているかというと・・・難しい。管理組合も年間予算で動いているので,思いつきで予算変更できない。次回の予算編成時に課題が引き継がれない,という流れが常態化しているのではないか。
2. 管理会社に経験がないこと
前述のとおり,都内でも事例が少ないのだから,管理会社にもまともなノウハウはないと思われる。ノウハウがないのであれば,「専門家を紹介します」と言ってほしいところだが,そうはならない。通常の管理業務から大きく外れる改善案は,「管理業務外」だからではないかと思う。彼らもやたらとリスクばかりとれない。管理組合が積極的に業者を選定し,行政に相談していかないと実現は不可能だ。
それでも実現例はある
ときどき撤去,平置き化の記事も見つかる。以下の記事では足掛け4年,となっているが,私の印象ではかなりスムーズに進んでいると思う。
全国的に見れば,機械式駐車場の撤去も「珍しい例」ではなくなっていくと思われる(そうなってほしい)。
駐車場メンテナンス会社の方々の気持ちもわかるのだが,機械式設備の維持は「安全」にかかわる問題なので,要らないのであれば撤去は待ったなしである。
私としても,機会があれば,こういった大仕事を抱える管理組合のお手伝いをできればと思っている。というわけで,継続的に調査を進める。