Skill portfolioが技術者の人生を豊かにする要素の一つだとしたら,投資家に学ぶのも一考の余地あり。
投資のテクニック本ではない。充実した生き方をするための知恵を伝える本だ。
この本を読んで改めて思うのは,投資家たちはずるいことをして他者を出し抜いたわけではないということ。とにかく全員並外れた忍耐,自制心の持ち主だということは分かる。普段はじっくりと分析をしつつ,10年以上も「その時」を待つ。そんなことができるから投資家になれる。できない人がねたんでもどうにもならない。テクニックではないところが違う。
個々の投資戦略はかなり違っていて,同時に両方を手掛けることはできない。ここは当人の気質によって異なるということだろう。自分に合った投資戦略を超長期で続けることができるか。周囲が浮かれているときに自分は冷静でいられるか。
ひるがえって,投資家の考え方,ポートフォリオに対する考え方は,技術者にも応用できるのではないかと思う。昔から「Skill portfolioを持つ」とか「学習への投資」は良く言われる。技術習得は最低でも数年はかかる。長期的な視野がなければ,うわべだけのコピペ野郎になってしまう。
最近の生成AIも,浮かれ気分が抜ける時は来る。人間は飽きやすい。
過去の「ITの浮かれ気分」としては,デザインパターン,関数型プログラミング,ビッグデータ,IoT,serverlessなどなど・・・数限りなくある。AIだって過去に2回,熱狂と絶望を経験してきた。
結局これらの技術は,基本技術に「織り込まれた」。株価にnewsが織り込まれるのと同様。織り込まれた技術は,技術者的には競争力を失う。コモディティ化してしまう。
技術者を続けたければ,技術のコモディティ化に対する付き合い方を考える必要がある。付き合い方の一つがskill portfolioなのだとしたら,有名な投資家たちの考えは役に立つのではないか。
表紙裏には,
> 自分の無知に用心すること,基礎をひたすら鍛え上げること。
> 忍耐強くあること,信頼と善意を引き寄せる行動をとること。
> 流行を追わないこと,偉大な先人の技術を模倣し続けること。
とある。
たまにはAnnual Reportを読んだり,Shareholders meetingを聴くのも良いことだと思った。特にBerkshireのAnnual report内のBuffett氏の文章は確かに勉強になる。
Berkshire Hathaway inc. 2023 Annual report
https://www.berkshirehathaway.com/2023ar/2023ar.pdf
今年のAnnual shareholder meeting。ご健在ぶりが素晴らしい。この歳でこれだけ軽快に明晰に話せることを尊敬する。
何度か"Charlie"って言う箇所があるけど,ちょっと泣ける。