K's Atelier

個人的な学習記録

Weierstrassの準備定理

久しぶりに永井保成「代数幾何学入門」で遊ぶ。
第5講「平面曲線の特異点解消」の冒頭の式
 f(x,y) = x^5 + x^4 -2x^2 y^2 + y^4 + 2x^2 y - 2y^3 -x^2+y^2 = 0
に対する
 a1(x) = 2x^5 + 8x^7 +32x^9 -10x^{10} + \dots
a2(x) = -x^2 +x^5 +4x^7 + 16x^9 - 3 x^{10} + \dots
u(x,y) = 1+ 2y + 3y^2 + 4y^3 + 5y^4 + x^2 +4x^2y 10x^2y^2 + x^4 + \dots
の計算例で, u(x,y)は計算できることが分かっていたのだが,a1(x)a2(x)が全然分からなかったのだ。
第4講のWeierstrassの準備定理が間違っているのかと思っていた。

つい最近,堀川穎二,「複素代数幾何学入門」を読んで,記述が正しいことを確認できた。
「複素代数幾何学入門」では,証明が二つ紹介されている。
一つが永井本と同じ,形式的ベキ級数を使用した構成的な証明,もう一つが留数定理の応用。
代数幾何学多項式が基本的に複素数係数であることと,代数学の基本定理からいって「複素数が怪しい」と思っていたら当たりだった。

堀川本を読んで良かった点は,証明の正しさを確認できたこと以外にもある。

多変数の正則関数の局所的な性質に関して最も基本的で重要な定理はWeierstrassによるもので,予備定理または準備定理(preparation theorem(英),Vorbereitungs Satz(独))と呼ばれる。

([堀川]p.35)
準備定理が多変数の正則関数の性質を調べる道具だ,ということを認識できた。

これで証明に自信が持てたので,計算例の計算式を地道に展開し・・・a2(x)の項が確かに計算できることおよび計算手順からa1(x)a2(x)yの次数が2未満になることが納得できた。
y^2で割った余りを使うんだから,そりゃy^2より小さくなって当然。

ここで改めて,永井本の帯に「楽しみながら峻峰を目指す」と書かれていた意味が少し分かった。
永井本は,数学の複数分野の基礎事項に対し,代数幾何学がどのように使われるかを示している。
代数幾何学自体の説明よりも,代数幾何学を使うと何ができるのかを示している。
たまたま計算例を,手計算が可能なレベルに抑えているだけだった。
なので,永井本に書かれている事項を他の専門書籍で調査すると,応用としての重要性が分かる。

本の記述自体は峻峰に向かうロープウェイみたいなものなので,ふもとを探索すると途端に景色が変わってくる,という感じ。
コツは掴んだけれど,まだしばらく探索が続きそう。