問題集を貸主の立場で読んでいると,「これは覚えてないとまずい」と個人的に感じる設問が時々出てくる。出題頻度とは関係なく,貸主だったら押さえておいたほうがいいかもしれない。
p.262[H29-問17]
賃貸建物が損傷した場合において,その原因が天変地異等,不可抗力によるものであるときは,貸主は賃貸建物を修繕する義務を負わない。(不適切)
民法606条1項より,貸主には修繕義務がある。「使用に適する状態で使用させる義務」は修繕義務に付随するので,不可抗力であっても修繕義務は発生する。その通りだとは思うが,最近の自然災害は想定を超えてくる。貸主としてはどう対応するかをよく考えないといけない。例えばどの保険に入るかとか,いざ災害発生時にはどうやって保険申請を通すか,などを予習しておかねばならない。
p.266[H27-問17]
借主が賃貸物件に給湯設備を設置し,賃貸借契約終了時に貸主に対して買い取るよう請求をした場合には,貸主が承諾した時に売買契約が成立する。(不適切)
借主の意思表示が貸主に到達すれば売買契約は成立するので,貸主の承諾は不要だ。貸主の同意を得て設置した造作は,借主は貸主に対して時価で買い取らせることができる,となっている(造作買取請求権(借地借家法33条1項))。ということは,貸主があいまいな返事をしてしまったら,設備が追加されたあとに「買い取ってください。あなたは"やっていい"って言ってましたよね」となってしまう恐れがあるということだ。貸主側の対応としては,設備の型番や安全仕様なども含めて必ず確認しないといけない。でないと,買取はしないといけないし,買い取っても廃棄しないといけないし,建物も痛むし,という状況になるのではないか。
参考書籍