「住宅賃貸借契約書」
(契約期間中の修繕)
第10条の5 乙は,本項第一号から第七号に掲げる修繕は,甲への通知および甲の承諾を要することなく,自らの負担において行うことができる。
四 給水栓,排水栓の取替え
発端
不動産管理会社から,「洗濯機の蛇口がぐらぐらしていて,このままでは水漏れの恐れがある,と借主から連絡があった」との電話を受ける。
私は,「蛇口が古いからぐらついているのではないか」と判断(この時点では現物は見ていない)。部屋で実際に確認することを不動産管理会社に伝えた。
確認結果
実際に見てみると,蛇口ではなく,水道管が壁に固定されていないので,止水栓カバーを緩めるとぐらつくことが判明した。蛇口は劣化の様子なし。
このままでも水漏れは発生しないはずだが,と借主に伝えると,「洗濯機を大きなものに買い替えたいので"壁ピタ水栓"にしたい。それに伴って業者に指摘を受けた」との回答。普通の修繕かと思っていたらそういうことか。
修繕?
借主の使用前からぐらついてはいたが,借主がやりたいことができないから修繕,ということになる。これをどう考えるか。
壁ピタ水栓の取り付けに関連して,水道管が固定されていないことが問題になることはあるようだ。
水道管が固定されていないグラグラ動く洗濯蛇口を壁ピタ水栓に交換 - 埼玉水道修理サービス
水道管を壁に固定すると,リンク先の情報ではだいたい4万程度かかる。
貸主としても,ぐらついた水道管のままで適当に工事されると最終的に良くないので,調査と水道管固定に関しては出費を考えるが,それ以上は契約書にある通り,借主の負担だろう。貸主の対応としては以下が考えられるのではないか。
1. 通常使用には問題ないとみて,あとは借主判断とする(借主負担)。
2. 後々も価値があるとみて,水道管固定は貸主負担,あとは借主判断とする。
3. 使用する洗濯機のサイズと合わせて,本当に高さ上げが必要か判断する。
もし,洗濯機の位置を調整できるのであれば,蛇口の高さを上げなくてもよいのでそこまでの工事は要らない(普通の蛇口を最近の自動止水栓に変えると,幅に余裕ができる)。
費用負担だけでなく,技術的な可能性がいろいろと考えられる。借主が居住設備に詳しくない場合は,業者の言い分がそのまま通ってしまう場合もある。
教訓
不動産会社も初動では現場を見ずに借主の話をそのまま流すだけなので,判断に必要な情報は含まれない。「借主さんがこういってますけどどうしましょうか」としか言わない。なので,「どうすべきか」の規範としての契約書,管理規約,ガイドラインが必須。貸主としては「契約書にはなんて書いてありますか」というべき。
所有者は自分であっても,自分の判断だけで「いいですよ」とは言えない。「最終的にはオーナーのご判断なので」と不動産屋が言ってきても,そこで「いいですよ」と言ったあと,「管理組合の承諾が必要だった」ということもある。