施主は常に情報武装を怠らないこと,というお話。
2019年:建築施工管理技士の不正合格が発覚
建築施工管理技士には,従来,資格取得にあたって実務経験が求められていた。これは建築系資格全般に当てはまるものだ。現場の安全管理ともなると,知識や法律ではどうにもならないので,経験は必須なのだ。
しかし,建築現場の人材不足は非常に深刻なようで,「経験者のみ」としたのではもう人数が集まらない。そんな中で起きたのが,不正合格事件だった。
2021年:建築施工管理技士捕の新設
2021年の建築施工管理技士試験において「技士捕」という資格が新設された。これは「ある程度経験の条件を緩めよう」というものだ。昨今のIT技術の進歩によって,常に経験者がべったり張り付かなくてもいいんじゃないか,という議論などもあり,定まったようだ。実際に現場でITを使うかどうかとは別。
2020年:民法改正「契約不適合責任」
契約不適合責任,とは「契約書に書いてあることが,約束のすべてです」という考え方。これまでのように「普通考えておかしくない?」という指摘は通じない。背景には,近年の裁判の争点が法律と無関係な「個別専門知識」に依存するようになってきて,法律家としては「法律の範囲で判断したい」となったのではないかと思われる。
施主は情報武装すべき
一言で言えば,施主はこれまで以上に情報武装が重要。
技士捕の新設は裏を返せば「現場に未経験者が入ることを法律が許容してきている」ということ。社会情勢からすればある程度やむを得ない。ここは施主側が力を付けて,「おかしな施工を見抜く」必要がある。
民法の改正も,勉強嫌いな施主にとっては厳しい。問題が大きくなってから「そんなことになるなんて思わなかった」と言っても遅い。
これからは,建築の現場に相当数の「未経験者」「初学者」が入ってくるのは前提として付き合う必要がある。言い方を変えると,「情報武装した素人」の方が「不勉強なプロ」よりも強い時代になってきた。きちんと勉強し,物言う施主になって,施主も業者も共に力を付けていける,そういう付き合いができるようになりたい。