これからの時代の技術講師は,英語で公開される最新情報をリアルタイムで受講者に伝える, Influencerになるんだな,ということを理解させられた一日だった。
web servicesの変化の速さ
最近の技術は,web servicesが中心になってきている。web servicesの大きな特徴は「日進月歩で変わっていく」ということだ。もはや英語書籍であっても,最新情報を提供するのが難しくなっている。
また,web servicesが標準化の流れに沿わなくなっている,というのも大きい。AWSのようなweb servicesが先行してしまうと,とにかく「AWSのreleaseを追え」ということになってしまう。もう一度Oracle Databaseのころのように「SQLを標準化しよう」という流れになるのかは分からない。LinuxからKubernetesの流れがそれに近い気はするが,Kubernetesにそこまでの力があるか分からない。
日本語技術書籍のレベル低下
日本語書籍が初心者向けのものしかなくなってきた。分かりやすくするとこうなるのか,という気持ちは分からないでもないのだが,「分かりやすく」には大きな落とし穴がある。
- 分かりやすさを追求すると,分量のわりに技術レベルが低くなる。
- 分かりやすさではなく「教えやすさ」が主題になる。
「分かりやすい」と言ってもらうための一番簡単な方法は,「難しいことを教えないこと」だ。例えば,ITでは,昔から「並行処理」は最難関の一つだ。いくつものweb application frameworkが,concurrent programmingをprogrammerに意識させないように工夫をしてきた。そういうframeworkでしかprogrammingしたことの無い人は,いつまでたってもconcurrent programmingを理解できない。研修でもconcurrent programmingを真正面から扱わない。できることだけしかやっていない状況では,いつまでたっても「本当に困難なことを解決する」段階にたどり着けない。
Influencerになるということ
私がprogrammingを勉強した時代は,free software文化,hacker文化の時代だった。なので,AWSの講師をすることにはかなりの違和感を持っている。
なぜ,AWSの人間ではない私が,AWSの製品を宣伝する役割を担うのか。それは,自分にとって,受講者にとって本当に価値のあることなのか。
だが,講師の準備をする中で,完全英語の動画と文書だけで準備作業するようになり,少し意識が変わった。「最新の情報をできるだけ早く日本語圏の技術者に展開することで,海外との技術力の差を軽減する」という役割なら,free software時代の文化となじむのではないか。後半の「技術力の差を軽減する」ところが,free software文化となじむ気がするのだ。選択肢はできるだけ開かれるべきだ。
従って,自分の本当の課題はAWSのservicesの知識やノウハウではない。いかに情報の鮮度を保って,受講者に展開するかということだ。