美術の世界では,カメラが発明されるまでは,職人的な画家が大半だった。
生き写しのような,見えるままの世界をキャンバスに写し取るのが仕事。
遠近法,パースもそういった流れからできている。
人物画,静物画はみな,視覚対象をどうとらえるかを考えている。
カメラができたことによって初めて「美術とは何か」を本気で考える段階に入ったそうだ。
プログラマの世界では,生成AIが発明されるまでは,職人的なSEが大半だった。
顧客に言われた要求をコードに表現するのが仕事。
コーディングスタイル,デザインパターンもそういった流れからできている。
オブジェクト指向のきっかけの一つはGUI。視覚対象をどうとらえるかを考えている。
生成AIができたことによって初めて「プログラミングとは何か」を本気で考える段階に入った。
上のアナロジーでは,生成AIのアルゴリズム改善は,カメラの品質改善と対応づけられる。これ自体は大きな産業にはなるだろうけれど,所詮は品質改善型の職人作業だと思われる。
芸術家は,カメラの登場をきっかけにして,写実ではないところに生き方を見つけた。
プログラマも,生成AIの登場をきっかけにして,現実の業務の写しとしてのシステム開発を離れるのではないかと思う。
一つの予想として,従来の「顧客の要求を実現する」仕事から「顧客に感動を与える」仕事になっていくのではないか。
アート思考が重要,というのは,ビジネスに役立つからというよりも,本当に創造的な仕事をする上で重要だから,という気がする。